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吼える月
第24章 残像
 

「俺、そんな単純にいかねぇ気がする」

「奇遇だね、実は僕もだ。おかしな部分が見つけやすいところにあったのなら、灯をつける時点で僕は気づいていただろうからね。またよりによって燈篭の模様は繊細で。まあこれは青龍殿に限らず、4国の神殿共通の作りになっているからなんだけどさ。色や神獣の模様こそ違えど」

「そうだな、玄武殿は亀の甲羅のような模様で、黒が基調だったからな。こんなに青くにょろにょろ間延びしてねぇや」

 にやりと笑うサクに、テオンが呆れた声を向けた。


「お兄さん……、青龍を祀る青龍殿で青龍を"にょろにょろ"なんて、バチがあたるよ。確かに玄武のカクカクとした模様よりは多少間延び感あるかも知れないけど、にょろにょろだったら古代文字だって負けてな……ん?」


 突然テオンが、不思議そうな声を上げた。


「どうした、テオン?」

「んんん?」

「おいテオン、前のめりになりすぎだ、落ちるぞ!!」


 慌てて両手でテオンの傾きすぎる上半身を支える。

 そんなサクの苦労を知らず、テオンは朗らかな声を上げた。


「お兄さん、古代文字だ!!」

「え?」
 


「ずっと燈篭の縁に描かれてたの全部青龍の模様だと思ってたけど、下にある少し大きめの、あれは古代文字だよ!!」

「大きめ……あのやたら太い"にょろにょろ"、あれが古代文字!? 俺全然見分けつかねぇ……。で、なんて書いてある?」


「んー。ふたつの単語だ。"開"と"地"」

「なんだそれ」

「わからないけど、次の燈篭も……ああ、やっぱり文字が違う。その奥のは、"蛇"と"生"。次は火が消えた燈篭で、遠いし薄暗くて見えない……」

「左はこんな感じのだぞ。右のにょろは、最初の右のにょろと同じ形だ」

「にょろ…って、お兄さんの目ではあそこ見えるの!? 目よすぎ!! もう一回、ええと……その形は……」


 テオンはサクと同じく指先を宙に動かし、明るい声を出した。


「それは"休"!! だから3つ目は"休"と"地"だ」

「おお、テオン。お前すげぇぞ、さすがは俺の頭脳!!」

「えへへ。完璧ではないけど、学んでいてよかった~」


 ふたりは喜び合い、そして首を傾げる。


「「で?」」



 そう、問題は――

 それが"なに"なのかだった。


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