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吼える月
第26章 接近
 



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 我らは星見。

 倭陵の過去と未来を視る力を持つ特殊な一族の末裔なりて、女神ジョウガの命のもと、汝ら倭陵の民に警告を与える者なり。 

 我、汝らに古の昔語りをしたり。


 それは倭陵が出来る前の、遙かなる昔のこと――。


 女神ジョウガと彼女に仕える四神獣、魔物に食われし此の地の人間達を目にしたり。

 ある男女、魔物に囲まれ、自らの命が脅かされる剣呑な場面にて、自らの幼子を逃がすために進んでその身を捧げんとし、それを見しジョウガ手を挙げると、四神獣は魔物を滅しその人間を助けたり。

 ジョウガ、その男女に尋ねたり。命惜しくはないのかと。

 するとその者達は声を揃えて答えん。


 愛するものを助けるために、この命はあるのだと。

 それが子を作った親の当然なる務めだと。

 親の愛はなによりも神聖で、なによりも強きものなのだと。


 その答えを気に入りしジョウガ、幼子がすくすくと育つようにと、此の地に蔓延る魔物達を一掃し、今後魔物達が外から此の地に寄りつかないように、障壁となる外壁を築くことにしたり。

 遠い彼の地でもわかるように、警告のように煌めかせようと、ジョウガ、防御に秀でた玄武ではなく、青龍の輝ける逆鱗を一枚手にして、その者達に問うた。


 汝、子を守る強き盾にならんや?


 その者達は喜んで頷き、その命は青龍の逆鱗と混ざり合い、その愛ゆえに強く光輝いた。

 それを見しジョウガから零れし一滴の涙、それが今の蒼陵を囲む海とならん。

 そして残されし幼子……後に皇主と呼ばるる者を守る防護壁は、最強の強度を誇り、その特殊な素材は後に色々と研究され、"輝硬石"とぞ呼ばれけるが、それは真の名からすれば、ただのまがいものなりて、その正しき意味を知るのは、皇主近辺の者のみである。
 

 ~星見文書~



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