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甘く、深く、繋がって
第10章 戻れない日常
声、は……

指摘されると恥ずかしい。
眉の下がった私の表情をどう解したのか
「帰り何か買ってくるか?」
山下さんに心配そうに言われて、首を左右に振った。
「いえ、大丈夫です」
「そうか。遠慮するなよ?」
優しい笑み。
「ありがとうございます」
山下さんは一つ頷いて新田さんを引き摺るように連れて出て行った。

ふぅ……

小さく深呼吸。
心配されるような事は何もない。むしろ……脳裏を過った斎藤さんの意地の悪いでも甘い笑みに、身体がヒクンと疼く。

……んっ……
だめ……

頭を軽く振って淫らな思考を振り払う。

見渡すフロアに残ってるのはあと数人。
外に出て食べたいと思えるほどの食欲はない。給湯室で温かいカフェオレを入れて、デスクに戻った。

金曜日の遅れもあるのに、思い出された今朝の悪戯に集中力が続かない。

少しでも取り戻さなきゃ……

私はもう一度深く呼吸してパソコンに向かった。

程なくトンと置かれたコンビニの袋。見上げるとしかめ面をした畠山さんが立っていた。
「あ、お疲れ様です。あの、これ……」
「金曜日休んだだろ?」
じっと見下ろされて、ドキッとした。
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