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甘く、深く、繋がって
第16章 過ぎ去らざる戒め
い、や……

恐怖で足が竦む。でも
「今、帰り?」
そう言って運転席から降りてきたのは、畠山さんで……
ホッとした私はその場に座り込んでしまった。
「どうした?」
急いで駆け寄って来てくれる。その声が畠山さんのだと今は分かる。
「大丈夫か?」
すぐ横に座り込み、心配そうに覗き込んでくる。
「お前倒れたばかりだろ?何でこんな時間まで仕事してんの?」
私を心配する畠山さんの優しさに、心に余裕がなくなっていた私は恐怖が解けた安心感も相まって、つい涙をこぼしてしまった。
「おわっ!?どうした?」
焦った畠山さんがおそるおそる私の肩に手を添えた。その大きな手に斎藤さんを想って、涙が後から溢れてくる。
「だ、大丈夫です。……くろ、黒田さんかと、思って怖かったので……」
「あ、悪い」
畠山さんがぱっと手を離す。所在なげに自分の手に視線を落とし
「ちょっと待ってろ」
車の方へ駆けて行った。
ほどなく戻ってきた畠山さんの手にはビニールに包まれた白いタオル。旅館の名前が端にプリントされてある。
「使ってないから、やる」
ビニールを破いて、顔をそっと覆われた。
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