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異常性愛
第16章 萎凋
  
親子喧嘩の原因は些細な一言だった。
弁護士の苦労話を紹介するテレビ番組が食卓に流れていた。
離婚問題に立会うカウンセラーをボランティアでやっているという弁護士は、母親にとって子は命より大事だと説いていた。
父親はそれを見て、
「お前は母ちゃんに付いてかなかったからな。冷たいヤツだ。」
と冗談まじりに少年をなじった。

両親が離婚した時、少年は事実を知らされていなかった。
父親は物心つかない七歳の少年に、親の離婚など理解できないだろうと「¨ママ¨は病気で入院するからしばらく帰らない」と少年に方便を使い、少年が理解できる頃合をみて事実を伝えるつもりだった。
幼い子供の心を傷つけぬ親心だった。

だが、その後の荒れた生活はそういった家族間の思いやりを失い、父親は八年前に息子に告げた方便を忘れてしまっていた。
父方に残ることを、少年が希望したような口ぶりで話したのだった。

少年には四つ上の兄がいたが、父親はその兄には事実を伝えていた。
父方に残る意思を示した兄と、少年を混同したようだった。
まるで少年が母親を捨てたというような父親の無神経な一言は、少年には許容し難いものだった。
茶碗を投げ、怒りをぶつけるのも無理はない。





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