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異常性愛
第16章 萎凋

少年の父親は経済成長に取り残された一人だった。
だが教団内での役職や地位は父親を慢心させた。

信仰さえあれば生きていけるという思い込みは、勤労への意識を低下させた。
教団組織の活動は夜間に集中する。
活動に支障をきたす夜勤や残業の多い仕事には就けなくなる。
職の選択幅は狭くなり、社会のルールから徐々に外れていく父親は職を失い、支えるべき家族を省みなくなっていった。

家族中が熱心に信仰するゆえ家庭内に自浄作用はなく、貧しさを信仰で誤魔化しながらの生活は窮地に陥ってしまう。

そんな中、いつしか母親の帰りが遅くなることが多くなった。
幼い少年の記憶の底には、両親が言い争う場面が色濃く残っていた。
それは遅く帰った母親を殴り、烈火のごとく怒り狂う父親の姿だった。




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