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第47章 思い込み
稜は一人で会社を出ることにする。

まだ佐々木に顔バレしていないユウには、その前に、玄関のとこに立っておいてもらう。

佐々木と稜が会ったら、もう一度その場でキッパリ断る。

佐々木がしつこく言い寄るなら、頃合を見て皆が通りかかる風で合流。

一緒に帰りましょ、で佐々木からさり気なく引きはがす。

異性であるユウには、襲ってこられた時以外は、去るまで知らないふりをしといてもらう。


なんとかその方向で決まった。

「なんか...こんな事になるなんて。皆、ごめんね」

まさか自分がこんなストーカーまがいの行為を受けることになるとは思ってもみなかった。
しかも、相手は1回会っただけの見合い相手だ。

「何言ってるんですか。みずくさいなぁ」
「そうですよ!」
「高崎さんは悪くナイんですからぁ」


「えっと...ユウくんもごめんね。お休みの日にこんな事頼んじゃって」

“くん”を付けるか、“さん”を付けるか迷ったが、羚汰の後輩なら、“くん”でも構わないだろう。

「いえ。大丈夫っす。リョウさんには、お世話になってるんで」

全く知らない会社に来て、知らない人たちばかりに囲まれて、ほとんど知らない人の為にこんな事まで頼まれるなんていい迷惑だろう。

なのに、嫌な顔ひとつせず、にかっと笑う。

黙っていると、少しとっつきにくそうにも思えるのだが、笑うとほんと幼くなり、愛嬌がある。

麻衣と里奈が、つつきあってこそこそ顔を見合わせている。

「高崎さん、紹介して下さいよぉ」

麻衣がこそっと言ってくる。

「あ、えっと、ごめん。...羚汰のバイト先の後輩、になるのかな、ユウくん。...だよね」

「はい。ユウです。どうも」

大きな体をぺこりと曲げて挨拶をする。

麻衣たちが、小さな歓声をあげる。

「何歳ですかー?」

「ちょっと、今はそんな時じゃ」

桃香が軽くたしなめる。

麻衣が桃香に見えるように小さく舌を出す。

「あ、今度の春でハタチっす」

そのセリフに皆がびっくりする。

どう見ても今19歳には見えない。

かなり落ち着いて...というか、老けて見える。

「え、年下。マジ〜」

麻衣と里奈がショックを受けている。
彼女らの中では年下は、ありえないのだろう。

道理で笑うと幼いカンジなワケだ。

ユウのほうは、そんな反応に慣れているのか、にこりと笑っている。
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