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少年悪魔
第17章 少年の迷いと、少女の決意

*
「あのね、ハル」
繭は遥斗を見つめたまま、話を続けた。
「私は、記憶を無くしてもいいと思ってる」
「え…」
どうして、と言いたげな遥斗に繭はふわりと包み込むような笑顔を見せた。だが遥斗には納得できなかった。
「…無理だよ。繭も周りも忘れているのに、自分だけ覚えてるなんて、僕には…、耐えられる自信がない。僕は…、」
遥斗の中で今まで溜まっていたものが沸き上がり、涙となって溢れ出した。
こんな情けないところを、見せたいわけじゃないのに。
「…ハル」
繭が遥斗に手を伸ばす。
「記憶なんて…。そんなものなくても、また私は貴方に恋をすると思うから」
だから、泣かないで。
そう言って、繭は遥斗をそっと抱きしめた。
遥斗は、静かに泣いていた。

