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少年悪魔
第19章 涙の理由
*
繭が目を覚ますと、暗い教室の中にいた。
なぜ、こんな暗い場所にいるのだろう。
ここは、どこの教室だろう。クラス教室でないことだけは確かだ。
教室を出ると、【ゼミ室】と教室名の彫られたプレートが目に入ってきた。
場所は理解したが、自分がなぜそんな所で寝ていたのか、まったく思い出せない。
階段を下り、クラス教室に行くと、室内には誰もいなかった。
自席に置きっぱなしになっていた鞄を持って、教室を後にし、昇降口で靴に履き替えた。
ふと視線を感じ、その方向をみると、繭の目が、異形の姿を捉えた。
「…!」
何だろう。自分の目はおかしいのだろうか。
嫌な汗が噴き出し、肌を伝って垂れてくる。
異形はじっと繭を見てから、ゆっくりと闇に溶けていき、それきり姿を現すことはなかった。
校門を出ると、冷たい風が頬を掠める。
繭は、先程の異形への恐怖もあり、地下鉄駅に向かって足早に歩いた。