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加虐の皇子と愛玩ドール
第7章 耽溺被虐

 市内の一等地に区分される某界隈、その邸宅は、洒落た住宅街の一角で、ひときわ存在感を主張していた。

 塙岸みおりは、この純和風の邸宅を仕切るさる小企業の代表取締役である人物の、細君の私室にいた。

 古びた木材独特の芳香が、そこはかとなく漂っていた。そして、それにも優る風雅な藺草が、謹み深く香る。
 ただし今、それら全てを相殺せんばかりの香気が、部屋全体に充満していた。甘く淫猥な動物性のそれは、しっとりと、ありとあらゆる乾性に染み込んでゆくようだ。

「ぁっ、……はぁ、はぁっ……」

 窓を後方にした書院の手前で、女性が一人、瑞々しい裸体を緊縛されていた。
 M字型に開いた脚は、健康的な筋肉がほんのり盛り上がった太ももから、脇腹を覆った縄目にロープで縫いつけられていた。そうして薄い茂みの向こうにちらつくめしべを隠すことを、強制的に戒められていた。熟した乳首は、左右とも、短く折れた二本の割り箸で挟んであった。その白い丘を飾った蕾を苛む細い木の両端は、更に輪ゴムで固定してある。

 みおりは女性に、すなわち藍田与子(あいだくみこ)という名の女体の主に、膝を寄せて距離を詰めた。

「変わらないね……与子。ろくに触られてもいない内から、もうこんなに匂わせて。昔と全然変わってない。君の今のご主人様に、ペットの躾がなっていない証拠だ」

「ぁっん、……あああぁ、はぁっ」

 みおりはリードを引っ張って、首輪ごと、与子の首を引き寄せる。

 与子の少女らしさの残った顔はあどけなくて、黒い巻き毛がその面差しをひとしお清楚に引き立てている。ほんのり紅潮した頬の上方で煌めく深い色の双眸の奥で、羞恥と期待とが交差していた。

 みおりは割り箸から飛び出た乳首をこねくりながら、この三つ年下の愛玩動物の頬や首筋、耳朶に、無数のキスを散りばめる。

「あっ、ああぁぁ……やぅっ、ご主人様ぁ……」

 慎ましやかなソプラノが、悲痛な響きを帯びてゆく。

 みおりは与子の類を見ないハリのある皮膚のあちこちの質感を味わいながら、縄の圧迫からはみ出た肉に、口づける。太ももの内側をまさぐって、恥丘に繁った短毛を指に絡めては、その丸みを帯びた線を撫で回す。ロープの食い込んだ白い皮膚を唇で触れながら、時折、強く吸い上げる。
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