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加虐の皇子と愛玩ドール
第5章 公認遊戯

「ねぇ、みおりさん」

 みおりの腕に絡みついたほづみのそれに、力がこもった。

「また泊まりに来て下さい。修学旅行みたいで楽しかったです」

「そう?」

「私がみおりさんのお宅にお世話になることはあっても、逆って、なかったですし……」

 それに、と、ほづみの薄い唇が、花弁みたいに柔らかに綻ぶ。

「みおりさんがいつもお料理して下さってましたもん。今日みたいに、私がやるのも良いなぁって。好きな人に尽くしてるみたいで、気持ち良かったです」

「っ、……」

 どこまでかしずきたい体質なのだ。このマゾヒストは。

「今が冬じゃなかったら、そこに引きずり込んで、着ぐるみはいでた」

 みおりはマンションに隣接した公園に目を向けて、植え込みを示す。

 白い砂場にほど良い陰、ほづみを丸裸にして犯すには、打ってつけの条件だ。

「みおりさん……」

 こういうのも悪くなかった。

 帰宅すればしどけない格好をしたパートナーが出迎えてくれて、その身体をいじりながら風呂を待つ。食卓に、リクエストの期待に優る料理が並んでいる。

 絶対に口には出せないが、たった一日でも、ほづみと昔から暮らしている錯覚を覚えたものだ。

 みおりは雅音の嘘がいやではなかった。

 両親に挨拶して、話して、交際を許される。みおりは、ほづみと雅音が、そんな自分を横目にして、初めは笑いを堪えていたのに気付いていた。みおり自身、滑稽に感じながら、この茶番を楽しんでいた。

「冬まで、……ちょっと待てません。こうなったら、お姉ちゃんに、月一で旅行に行ってもらいます」

「…………」

 みおりはマンションのエントランスで足を留めて、ほづみのウエストを引き寄せた。さらさらとした誘惑的な髪を、一束、指に絡める。

「そんなに急ぐことないよ」

「え……?」

 ほづみを包むアイボリーのAラインコートに、栗色の髪がはらりと流れた。

 みおりを見上げる小さな夜空が、きらりと艶めく。

「公認になっちゃったし。私が雅音に代わってほづみを飼っても、文句は言われないってことだろう?」

「っ……!!みおりさん……」

 みおりはほづみの顎をそっと持ち上げて、キスを重ねる。

 淫靡なドールの唇は、こんな少女の真似事でも、とても甘美な質感をくれる。







──fin.
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