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第4章 ビスクドールー帝side－

杏の涙は凄く綺麗だった。大粒の真珠のような涙の粒が頬を伝う。


彼女は俺の気を惹いていない。

そんな邪な感情から零れ出た涙ではない。


純粋に自分の人生に絶望し、やりきれないのだ。



「杏を追い詰める気はなかったんだ」


俺は杏の座るソファに座り直す。


「すぐに泣き止みますから…」


俺は彼女の頬の涙を拭い、眼鏡越しに泣き顔を見つめる。


元々強い女ではない。杏はか弱い女。

守ってやりたいと思うが、父親との関係を考えると非常に厄介だった。

でも、彼女を上手く利用すれば、副社長の動きも制御できるかもしれない。

彼女は唯純粋に俺に好意を寄せているが、俺は心の中は邪な感情で溢れていた。