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理想と偽装の向こう側
第9章 衝動と不安
一目惚れから1ヶ月後、須永嘉之の個展が開催された。


会場費もばかにならない、期間はそんなには長くないようだ。


基本的、私は余り一目惚れをしない…
気になっても、じっくり観察してしまうのだ。


熱しにくく、冷めにくいので、一回誰か気になるとスパンが長くなってしまう。


でも、須永嘉之は違った。


余りにも好み過ぎて、衝動で突き動かされてしまう。


黎子が心配していた。


「あんた、尽くしちゃう方だし、片想いとか平気なタイプだから、気付いたら、いかず後家みたいにならないでね」


腐れ縁の黎子の言葉は、結構的中してしまうので、気を付けよう。


会場は、そんなに広くはなく全体的にホワイト一色で、作品が映えて観える。
真四角な作りではないので、スペースを活かすことも出来そうな、お洒落感を漂わせていた。


ぐるっと見渡していると、若い男性が近付いて来た。


「いらっしゃいませ。個展にいらしてくださったんでしょうか」


「あっ、はい…先月本で見まして」


「そうですか!わざわざ有り難うございます。宜しかったら、受付にお名前を書いていって下さい!また、何かの際には、お知らせとかしてもいいですか」


お知らせくれるんだ! 


「はい!是非お願いします」


若いのに丁寧な人だな~。


「以前から須藤の作品は、ご覧になられてましたか?」


「いえ…初めてです。専門誌見て凄い興味が沸きまして」


特に本人に…。


「それは嬉しいですね。本人もいるので伝えますね」


「須永さん、いるんですか!?」
「はい!」


超~ラッキー!!!
これを運命と呼ばずして何と言うか!


私のテンションは、うなぎ登りになった。

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