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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
「奥さんも美人さんですね。」


「…あぁ…僕には勿体ないくらいの家内だよ」


ん…?
何かさっきまでとは、ちょっと違った様な…。


そう思いながら、嘉之の方に視線を移すと眼が合った…けど。


げっ!睨んでる?


嘉之は明らかに、不機嫌だった。


こちらを睨みながら、席を立って個室から出ていった。


「須永さ~ん!どうしました~?」


元木さんの甘めの声が響く。


私の様子を察し、梶さんが背中を押してくれた。


「追っかけたら」


「は…はい…」


私は急いで個室を出て嘉之を追い掛けると、嘉之は御手洗いの前で柱に寄りかかり、腕を組んで不機嫌オーラを発していた。


「嘉之…」


私に気付くと、プイってそっぽを向く。


はい!?
なんでしょうか、その拗ねっぷり!?
場を少しわきまえて欲しい。

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