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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
「入りな…」


「うん…ありがとう」


嘉之のマンションに着いて部屋に入り買ってきたモノを出そうとした瞬間、壁に押し付けられた。


ドスンッと鈍い音がし、微かに身体に痛みが走る。


私は壁と嘉之に挟まれた状態になっていた。


いきなりこんな状況に、頭が混乱しかける。


「嘉之…どうしたの…?」


「梶さん…会ったんだろ…」


一瞬にして、嫌な予測が付いた…。


「そ…うだよ…だって仕事の打ち合わせ…だもん…会うに決まってるじゃない。つっ…」


嘉之は私の両手首を強く握った。


「打ち合わせの後は…何したの?」


「何も…してないよ」


ギリギリと締め付けられる手首、指に力が入らなくて荷物が落ちた。


ドサッ!!


音と共に中身が散らばり、キャンディが足元に転がる。


元木さん…
何を吹き込んだんだろう…。

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