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隠匿シリーズ☆番外編
第8章 次期執事は誰の手に




 ジョシュアはキッシュを咎めようかと思った。だが、キッシュの笑みに開きかけた口を閉ざす。


「……けど、少なくともここを離れたいと思ったことはないですよ。行く当てがないとかじゃなくて、レオ様の傍にいれば退屈はしないですし。それに僕、レオ様の“見張り役”なんですよ? 離れるわけにいかないじゃないですか」


 キッシュは困ったように笑う。


「……では、もしあなたの眼の前でレオ様が暴漢に襲われたらどうします?」


「そんなの、その時になってみないと解らないですって。ただあの方がいなくなるのは困るかな」


「困る?」


「はい。だって僕らみたいな弱い者の立場に立って考えてくれる貴族、他にいます? 僕らの村を壊した領主の裁きの場に、こっそり同席させてもらったんです。そしたらレオ様、僕が言いたかったことぜーんぶ言ってくれて。あんなに怒ってるレオ様、見たことなかったなぁ」


 懐かしそうに眼を細めるのを見て、ジョシュアの厳しかった顔付きがどんどんと緩んでいく。


「あの時思ったんです。ああ、この方が作る国なら、今よりもっとマシになるんじゃないかって。僕らみたいに虐げられる人間が減るんじゃないかって。だから……レオ様が命の危険に晒されたら、庇ってもいいかな、くらいには思ってますよ」


 最後は少しだけ気恥ずかしそうにキッシュは語った。




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