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隠匿シリーズ☆番外編
第2章 王子様の憂鬱



「アリエッタは今どこに? こちらに来ていますよね?」


 リビングに通され酒を呑まされる前に訊く。


「リタと野苺を採りに行ってるよ。ジャムを作ると言ってな」


 リタというのは母の名だ。図られたようにアリエッタと擦れ違い、母の策略ではないかと疑いたくなる。


 早馬で来ることは事前に伝えていたのだから。


「さ、呑め! 今日は泊まっていけるんだろ?」


「ええ、ですが明日には帰ります。仕事が滞ってしまいますから」


「そんなもの、お前の父にやらせておけばいい」


 祖父はフンッと鼻を鳴らす。


 誰にでも優しくおおらかで寛大な祖父だが、父だけは別だ。


 両親の結婚に反対はしなかったらしいが、可愛い娘を盗られた心理というやつか、父への当たりが強いのは健在らしい。


 国王としては申し分ない能力を発揮している彼は、家族の間では肩身が狭い。


 からかい甲斐のある父を、マーシャル邸にいる間だけは気の毒に思うこともしばしばだ。






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