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隠匿シリーズ☆番外編
第3章 ご主人様の裏の顔



 レオはキッシュの罵倒に不快さを表しもせず、自信に満ちた表情をする。


「今は、な。けど俺が変える」


「はぁ!? ねえ、ほんとに頭大丈夫? 変える? あんたが!?」


「ああ」


「あんたに変えられてるんなら、とっくに変わってたよ!」


 キッシュは力の限り叫んだ。レオの無責任にさに腹が立ち、氾濫した川のように感情が溢れて。


 領主に訴えに行った父が帰ってこなかったこと。それからすぐに母が死に、自分の歩んだ惨めな人生のこと。村人の凄惨な現状も。


 誰も助けてくれず、人を恨み、貴族を憎み。そうしなければ生きる気力が沸かなかったこと。


「あんたになにがわかるってんだよ!」


 喚き散らした最後をそう締め括る。一気に吐き出したキッシュは息切れをしている。


「……悪いな、キッシュ。俺にはお前の気持ちはわかってやれない」


 必死に喚いてもこれだ。やっぱり届きやしない。変えるだのなんだの言っておいて、人の気持ちを解りもしない奴に、なにを言っても無駄だった。


 これ以上こんな男と一緒に居たくなくて、キッシュが踵を返すと。


「だってそうだろ? お前の想いも生き方も、お前だけのものだ。それを簡単に……わかったつもりになることすら、俺にはおこがましくて出来ない」


 背中にかけられた言葉に、キッシュは踏み出しかけた足を止めた。





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