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あなたの面影
第7章 意外な敵
一仁さんはあまりテレビをつけない。

食事が終わると音楽をかけて他愛のない話をした。

昔行った海外の話や互いの学生の頃の話題とか。
とるに足りない話ばかりだったけど楽しかった。

家に一人でいるときはテレビの進行が時間の進行だ。
こうして二人で話しているともっと濃密に時間は流れる。

シャワーを浴び、アルコールを飲んで、じゃれあうように体を弄りあってふざける。
当然の流れのように私たちは肌を晒し、折り重なって揺れあった。

こんな幸せがあっていいのだろうか……

一仁さんに抱かれてる間、玲香ちゃんの言葉が脳裏をよぎっていた。

『お兄ちゃんがあなたなんて本気で相手にするわけがない』

たとえ刹那の悦びでも、今はこうしていたかった。
本当の寂しさを一瞬でも忘れて。

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