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あなたの面影
第10章 告白
でも誰だってそんなものなのかもしれない。
結婚して十年の夫婦でも相手のことをよく知らないということはあり得る話だ。
妻が過去に風俗で働いていたと知らない旦那に、旦那が昔他の女を妊娠させて堕ろさせたと知らない妻。
そんな夫婦は意外と多いのかもしれない。
知らない方が幸せなことというのは、確かにある。
知らなければ波風がたたないことも。

それでもわかり合えているという錯覚が何とか幸せにしてくれるものだ。
大切なのは何でも知っているということじゃなく、『わかり合えている』と思うことなんだ。

確かに私は聡志のことを知らなすぎたのかも知れない。
けどわかり合えているつもりではいた。
だから何一つ言葉を残さずに消えていった聡志が、本当は少し憎かった。

例えどんな事情があろうとも、私にだけは教えて欲しかった。
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