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ダークサイド・ムーン- 催眠術師の秘密倶楽部 序章 -
第7章 母親から女へ
「…ノート…役に立ったかな?…」
「ああ。ありがとう。助かったよ」
「…よかったぁ…今日一緒に帰ろ…ねっ…」
「ああ」
歩の勢いに、一緒に帰る約束をしてしまった。
歩と親しげに話していると、刺さるような視線を感じた。
歩は、ポッチャリ系の美少女で明るい性格からクラスの人気者で、歩の事を好きな男子も大勢いるだろう。
「何で、あんなキモい引き籠もり野郎が、佐々木さんと仲良くしてるんだ」的な嫉妬の視線だ。

面倒臭い。
学校に来るのが嫌になる。
だが、母との約束だ。
母をこれ以上、悲しませるわけにはいかない。

僕は気にせず、なんとか復帰初日を過ごした。

「…復帰初日はどうだった?…」
歩が、疲労困憊の僕に努めて明るく聞く。
「ああ。何とか乗り切ったよ」
「…周りの言う事なんか気にしないでね…」
笑顔で跳ねるように歩く歩の小振りの胸が上下する。

帰り道、僕が休んでいた間の学校での出来事を歩は細かく教えてくれた。

「可愛い」
時には笑顔で、時には怒った表情で話す歩を見て、不意に感じた。

「…じゃあ、また月曜日ね…」
僕は歩の家の前で別れた。

「正直、疲れたな」
独りになった僕は呟く。

久しぶりの登校、僕の噂話をするヒソヒソ声、好奇の視線、全てが煩わしく僕を疲弊させた。

家に辿り着くと、一気に襲ってきた疲労の波に逆らえず、僕はリビングのソファーに倒れ込んだ。

「…虎ちゃん!…どうしたのっ!?…」
母の慌てる声で目が覚めた。
どうやら、ソファーに倒れ込んだまま、眠ってしまったようだ。

「何でもないよ。大丈夫。久しぶりの学校で、ちょっと疲れただけだよ」
僕は起き上がりながら、オロオロしている母に笑顔で言う。

「…そう…そうよね…久しぶりの学校だから…疲れちゃったのね…」
母は自分に言い聞かせるように呟く。

引き籠ってから母は僕の扱いに異常なほど神経を使っている。
ここ、数ヶ月でかなりやつれたようだ。

「心配かけて、ゴメンね。母さん。大丈夫だから。寝たら治ると思うよ」
申し訳ない気持ちで母に謝る。

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