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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》

今では泉水は時橋と二人で光照の講義を受けている。様々な雑用は時橋が代わりにこなしてくれ、泉水はかえって仕事がなくなったほどである。流石に御殿奉公が長いせいか、時橋はすぐにここでの新しい暮らしにも溶け込んだ。てきぱきと雑用を片付けるため、光照にも伊左久も重宝がられており、伊左久などとも気軽に世間話に打ち興じている。光照手ずから点てた茶を頂きながらの愉しいひとときに、時橋も加わることになった。それは、泉水が久方ぶりに味わう、心から安らげる時間であった。

