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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
 庭の桜はもう樹齢も定かではない老木だ。この庵を建てるときには既にこの場所にそびえていたそうだ。薄紅色の花をたっぷりと重たげにつけた姿は、さながら妙齢の娘が薄紅の衣を身に纏っているように見えた。時折、鶯が遊びにきては、枝に止まって囀っている。
 夢五郎が来たときも、鶯が良い声で啼いていて、泉水は廊下でその音色に耳を傾けていたところであった。
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