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第61章 　《其の弐》　

　最後の瞬間に、涙を見せないと決めたのは自分だ。泣けば、子どもたちも何かを感じるだろう。
　別れのときは、せめて笑顔で迎えたかった。
　それでも、郁奈は常ならぬ雰囲気で何かを悟ったのか、急に泣き顔になって、ひしと母に縋ってきた。
「かかさま、お願い、行かないで」
　その時、背後から遠慮がちに声がかかった。
「そろそろ刻限にございますれば、ご出立のご準備を」
　迎えにきた槙野家の家臣が立っている。