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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第61章  《其の弐》 
 自分で自分が情けない。
 込み上げてくる涙に耐えていた時、誰かの呼び声が耳を打った。
「―橋どの、時橋どの」
 弥子はハッと我に返り、弾かれたように顔を上げた。新田家に嫁ぐまでは名乗っていた女房名だけれど、お屋敷を下がってからの四年間は忘れていた名前であった。
 そのまだ耳に慣れぬ名を呼ばれ、ゆるゆると顔を動かす。振り向くと、背後に嬰児を抱いた若い腰元が佇んでいた。
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