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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第62章 花随想Ⅳ~時橋について~
花随想Ⅳ~時橋について~

 〝胡蝶の夢〟外伝の最後を飾るのは、やはり、この人です。時橋という女性は、私=筆者にとっても忘れられない存在となりました。物語の初盤から登場し、最後の方まで常にヒロイン泉水に文字通り影のように寄り添い、まめやかに仕えた乳母です。脇役ながら、大変重要な役所を演じた女性でした。
 とはいえ、そこは脇役なので、時橋を中心にして作品を描くということはどうしても無理でした。そこで、是非、外伝(番外編)という形ででも、彼女を中心に描いてみたいという想いがあったのです。この小品を書いた時点で、既に前の三篇は出来ていますが、第一話の〝春雷〟はかなり以前に、正確にいえば〝胡蝶の夢〟本編が始まったばかりの頃に書きました。なので、執筆時期としては、後の三篇とは半年ほどの隔たりがあります。
 第二話〝簪~過去のある女~〟(仮題)、第三話〝十三夜〟(仮題)はそれぞれ八月末、九月初と殆ど間を開けずに書きました。
 更にそれから一ヶ月をおいて、最終話の〝決意〟ができたというわけです。この一ヶ月の間に〝胡蝶の夢〟が〝第一〇八回コスモス文学新人賞〟の長編部門で入賞という嬉しい知らせがありました。私の中には外伝をもう二つくらいは書きたいという想いがあったのですが、考えた末、時橋を主人公とする小篇を書くことで、半年間続いたこの大河小説を本当の意味で締めくくることにしました。
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