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第64章 十三夜の月　《壱》

―美咲を捨てることは酷いとそなたは言うが、仮にもし、俺がお京や子どもを捨てたとしたら、それは酷い所業とは言わぬのか？　誠一郎よ、そなたは美咲の兄ゆえ、妹可愛さにそのようなことを申すのだ。良いか、美咲は実家へ戻れば、父母もいるし、そなたもいる。いずれまた、どこぞへ嫁すことも叶おう。さりながら、お京には俺しかおらぬ。俺が見限れば、お京と子どもはみすみす路頭に迷うことになる。