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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
 秋の陽は短い。直に太陽は山の端に隠れ、鬱蒼と樹が茂った山中はなおのこと平地より早く闇に閉ざされるだろう。それでなくとも、夜の山は危険だ。どのような獣が徘徊しているやもしれず、夜盗が出るかもしれない。それを案じて止めたに違いなかったが、美咲は百姓の諫めるのをきこうとはしなかった。
 いかほど歩いたであろう、中腹辺りで紅葉が美しく色づいているのがふと眼に映じた。
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