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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
 内藤家に嫁しても子を一人として生すこともなく、ついに婚家には居場所を見つけられなかった自分のあてどない運命(さだめ)をあの少しだけ欠けた月に重ねて見ていた。
 白銀に輝く月を背景に、紫色の小さな花をたわわにつけた萩が揺れている。月が手を伸ばせば触れられそうなほど近くに大きく迫っている。よくよく見れば、月明かりに照らされた脚許に芒や吾亦紅(われもこう)、女郎花、紫苑といった秋の野草が群がるように自生している。
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