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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
 ならば、今この瞬間こそ、我が生命に区切りをつける時。
 美咲は手に持った懐剣を勢いつけて喉許に突き立てようとした―、その刹那。
 誰かがそっと美咲の手を押さえた―ように思えた。
―何ゆえ、そのように生き急ぐのですか?
 耳許で誰かが囁く。
 美咲はハッとして、慌てて周囲を見回すが、むろんのこと、誰もいるはずもない。
 ただ、幻想めいた秋の野がひろがっているばかりだ。
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