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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
もし、あの蝶が昔に亡くなったという尼の魂の化身だとすれば、老尼は美咲にただひと言〝生きよ〟と伝えたかったのだろう。自身も男に翻弄され数奇な生涯を送ったという尼が、はるかな時を越え、空間をも越えて、後の世に生きる若い美咲に心からの伝言をつたえにきたのだ。
それはまさに、この世の理(ことわり)を超越した事象―奇蹟というにふさわしい。
―生きて、生き抜いて、自分のゆく先をその眼で、あなた自身の眼でしかと見極めなさい。