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第64章 十三夜の月　《壱》

　眼を潤ませた美咲を村の男が眩しいものでも見るかのように見つめている。
「もし、良かったら―」
　わずかな逡巡を見せ、男がひと息に言った。
「俺と一緒に暮らさねえか―いや、暮らしませんか？」
　男は途中で言い淀み、口調を改める。
「そりゃア、あんたが俺なんかの田舎の百姓の手の届かねえような身分の人だってことは俺にも判るけど―、昨日、ひとめ見て惚れちまったんだ。良かったら、俺の女房になって、この村で一緒に暮らせねえかな」