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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
「私は江戸から来た者ですが、ついひと月ほど前に良人と別れたばかりの身です。ここには死ぬつもりで来ました」
「あんた―」
 輿助の眉がわずかにつり上がる。
「でも、もう死ぬのは止めました。過去など振り返っても辛いだけ、これからは前だけを見て生きて、自分が行き着く先に何があるのかを自分の眼で見届けたいと思います」
 あの不思議な尼の言葉を繰り返す。
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