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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第8章 《巻の参》
「槙野さまのご息女、ってことは、じゃあ」
秋月はまじまじと泉水を見つめた。明かりといえば細い月からの淡い光だけで、互いの顔さえ定かには見えない。それでも、じいっと見つめられ、泉水は頬が染まるのが判った。
「あいつの嫁さんか―」
秋月は呟き、小さな吐息をはいた。
「参ったな。まさか、お前があいつの女房だとは思いもしなかったぜ。だが、あの時、お前らは到底夫婦のようには見えなかった。まるで見知らぬ赤の他人同士のように見えたがな」