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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第12章 《巻の弐―待ち人―》
 しかし、その晴れの日を待つことなく、おさよは十六で亡くなった。おさよの生命を奪ったのは痘瘡であった。同じ長屋の幼児が立て続けに何人か罹患し亡くなったのが、おさよにも感染ったらしい。誠吉はもっと幼い時分に痘瘡にかかっていたのが幸いして、かかることはなかった。
「つまらねえ話だったろう」
 すべてを語り終えた後、誠吉は小さな吐息を吐いた。
「いいえ」
 泉水はかぶりを振る。
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