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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第13章 《巻の参―驟雨―》
「いや、留守ならば良いのだ。仕事中、邪魔をしたな」
男はすんなりと諦め、背を向けて帰っていった。腰高が閉まってほどなく、雨音が聞こえ始めた。そういえば、昼過ぎから雲が出て、今にも降り出しそうな陰鬱な空模様だった。
誠吉はすぐに仕事に取りかかろうとしたが、なかなか意識が集中できなかった。普段なら、こんなことはまずない。たとえ来客があろうと、用が済めば、また己れの世界に戻り、細工に全神経を傾けることができるのだ。