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第32章 失われた時を

「いつでも呼んでちょうだい。

　力になるわ。

　もし家柄が必要だというのなら

　どちらかのご子息を射止めてあげるから」


百合は顔を上げ笑っている


「やっぱり、

　いろいろな意味でお姉さまには敵わない。


　ありがとう。

　ずっと気になっていたの

　本当は私を恨んでいるのではないかしらと


　思い切って伝えてよかった。


　これからも百合を助けてくださいね」



「もちろんよ。

　二人きりの姉妹じゃない」


私たちは強く両手を重ねていた。


「ところで

　お姉さまはこれからどうされるの？」


少し心配そうに聞く


「そうね。


　少しゆっくり生きてみようかなと


　思ってるの。


　これでもね

　今まで　必死に生きていたから」


百合は微笑んだ。

「いつでも　戻っていらして」


「ありがとう。

　仕事がなかったら

　仲居にでもしてもらうわ　若女将」


「まあ」


百合がパッと華やかに笑う。


妹ながら美しいと思った。