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暁闇
第22章  躊躇いの理由


「……いつか終わるかも知れない関係だから、同棲までは踏み切れないってこと?」


乗り気じゃない理由はそれに間違いないような気がしたからそう口にしたけど。
……彼女はゆっくりと首を振った。


「違うの?」


再度聞くと、彼女は俺の腕の中で大きく息を吐いて。
そこから静かに顔を離した。

俯いたまま、すん……と鼻をすすり、目元を指先で拭って。
それから、口を開く。


「……違わないけど、違う」

「え?」


また、息を吐いて。


「……今までだって、充分幸せなのに。
一緒に暮らしたら……もっと幸せになっちゃう」


ぽとん、と。
彼女の膝に落ちた雫が、スカートのその場所の色を濃くした。
思わずそれに見入った俺は、


「……あんまり……幸せになると……」


続けられたその言葉に、再び彼女に視線を戻す。

 
「……お……終わったときがつらいから――――……」


ひっ……と、その言葉と同時にしゃくりあげるようにした彼女。


「……あおいさん……」


ひく、と。
身体を震わせて。

子供のように、目を手の甲で拭いながら。


たまらず、抱き寄せたその身体。


「何言ってんの……」


終わるなんて。
そんなこと、あるわけないのに――――。



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