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衝動[完]
第2章 保険室


祐先生。

祐先生。



心の中で何度もくり返す。


「お前は?」



「え?」


弥生は一瞬何を聞かれたのかわからなかった。



「お前の名前。」


そう言って自分を見つめる祐を見て、弥生は夕陽よりも赤くなりながら答えた。



「弥生!佐藤弥生!」


祐はくすくすと笑った。



「さぁ、授業中でしょ?戻りなさい?」


弥生は頷いて椅子から立ち上がり、ドアに向かってぎくしゃくと歩き出した。



「あー、弥生。」


弥生は心臓が跳ね上がる程驚いた。



名前……呼ばれた……。


慌てて振り向き、出来る限り普通を装う。



「な、なに?」



「あの時の女の子、どうした?」



「え?さ…里美?」



「もう学校来てる?」



「うん……。」



「そう、良かったね。」


にっこりと微笑む祐を弥生は眩しそうに見つめた。


覚えててくれた。


私のこと、覚えててくれた―――。

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