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誘淫接続
第4章 切断
 貞操帯は、確かに現物として麻琴の目の前にある。
 触れられるし、装着もできる。
 しまってある棚の中から、解けた魔法のように消え失せるようなことは、もちろんなかった。

 スマホの遠隔操作アプリも確かに残っている。
 だから『ご主人様』との関係が幻だったわけではない。
 確かにあったのだ。
 最後に公園で味わった怖さ、もうその関係をやめようとさえ思った体験は忘れてはいない。
 それでも、こんなにあっさり記憶や感触が崩れ落ちていくのはなぜだろう?

 『虚構』だったからだ。
 何年か付き合った、体温も匂いも声も知っている彼氏と別れた時も、こんな簡単に心から消え去るだろうか?
 そんなことはないだろう。
 『虚構』だったのだ。
 だから、これで良かったのだ。
 もう怖い目に遭うこともない。
 自分からも求めたことだ、と思い悩むこともない。

 もしかしたら、麻琴の相手をしていた『ご主人様』は人間ではなくて、自動応答アプリケーションだったのかも知れない。
 ネットという迷宮で見つけた、妄想を満たしてくれる『バーチャルご主人様システム』。
 『貞操帯自動発送機能』や、誰かがあらかじめ演じた『競争相手女性動画』もセットという徹底ぶりの。

 ――私みたいな、ぼっち女の相手してくれてありがとう。
 そう考えると麻琴はおかしくさえあった。
 麻琴は、スマホから遠隔操作アプリを削除した。
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