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唇に媚薬
第3章 強情プリンセス

到着ゲートから続々出てくる帰国者達。


「ハニー!」
「きゃぁぁダーリンお帰りなさい~~♡」


久しぶりの再会なのか、私の隣りで抱き合って喜ぶ男女。
そんな呼び方する奴が本当にいるのか!
キスまで始めた熱々ぶりに、至近距離で凝視してしまう。

……もし、万一
葵と私が恋人同士だったとしたら
こんな風に爽やかにハグをするのだろうか。


「…………」


想像できないってことは無理だな。
やっぱり私、葵のことは好きにはならない。
って1人で無理矢理納得した……その時


「……ん?」


バカップルが絡み合う、そのさらに向こう側に
小型スーツケースを引き、携帯片手に誰かと電話をしている男が目に入った。


老舗ブランドのトレンチコート
細ストライプのスーツ

それでいいのか商社マンと、ツッコミたくなるような
真ん中だけ尖らせた髪はやや茶色
ラインが美しすぎる横顔


……こんなに、カッコイイ男だっただろうか?

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