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唇に媚薬
第3章 強情プリンセス

「葵、大丈夫?」

「何が」

「夢じゃないよ……?」


バスターミナルの入口に差し掛かった所で、足を止めた葵。
眉間にシワを寄せて、私をじっと見るその目
……焦点合ってない。


「夢だろ」

「……違うって……」

「じゃあなんでお前、俺と手なんて繋いでんだよ」

「………!」

「俺とは恋愛できねぇんだろ?」


……キスされた時と同じ、切ない表情。

そう、葵は恋愛対象にはならない。
ずっとそう思ってた。

でも

あの雨の日から
葵のことばかり考えている。
キスされた唇が熱くて、火照りが止まらない。


「……蘭?」


ビジネススーツを着こなして
流暢な外国語を話して
仕事の出来る男の姿を、見せつけられて

……だからって
何十年って友達だった相手に
いきなり惚れるわけがない。


……好きになるわけ

ないのに………

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