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翻弄の果てに
第9章 環と祥子
『ん?何て?無い…とか聞こえたけど?』

アメリカンをひと口すすり、祥子を直視した。
ちゃんと見ててやらないと、話す声も聞き取れないような気がした。


『……その人には…もう居るんです…』

やっぱり、そっちの話か……俺、苦手だなあ……

『そうか、居るのか。えっ?今何て言った?』

『初めて会った時から、既に、素敵な彼女がいたんです…』

ますます消え入りそうな声で、祥子はそう言ったのだ。



沈黙だった。返せない言葉……

≪そんな男を好きになってどうする≫

≪女と戦うから手伝えとか?≫

≪頭の悪いしょこちゃんじゃないのに…他人の男が欲しいのか?≫


いったい、どうしたいんだ。で、何を相談しようってんだ。

俺は、沈黙するしかなかった。



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