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ピンクの扉
第11章 東京

由香と彼氏が愛し合っているとは知らずに…


「さあ着いた。ここが我が家だ」

羽田空港からレンタカーを借りて
急いでみたものの
都心からかなり離れた所なので
ゆうに一時間のドライブとなってしまった。


「奥さま、もう帰ってらっしゃるかしら…」

亜里砂は桃子に会って
誠心誠意謝ろうと思っていた。

帰国子女の彼女は
長年のクセでファーストネームで呼んでしまう。

おそらく桃子が訪ねて来たときの
応対で『智一』と言ってしまったので
桃子は亜里砂の事を愛人と勘違いしたのだろうと思った。

「ほんとに妻には困ったもんだ…
ちょっと考えれば俺が女にもてる訳ないとわかりそうなものなのに…
ましてや君のような美女が
言い寄ったりするはずなど…」

「いえ…智一は自分で思っているより素敵な男ですわ」

「えっ?」

彼女の言葉に、ドアを開けようとした動きを止めて
思わず振り返りしばし彼女と見つめ合った。

彼女が「何か?」という怪訝な顔をしたので
智一は我に返って「コホン」と咳払いをして
さっきのセリフは聞かなかったことにした。



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