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あの店に彼がいるそうです
第4章 超絶マッハでヤバい状況です
「おかえりなさい、雛谷さん」
「ただいまぁ」
 明け方、店に戻った雛谷が笑う。
 待っていたのはキャッスルのトップ二人。
 如月紫苑と紫野恵介。
 ムラサキコンビと呼ばれる、安定したトップだ。
 しかしタイプは正反対で、そこが客を捕らえて離さない。
「またイい人でも見つけたのか?」
 店が始まった時からの付き合いである紫苑は、硬派で強面の男。
 短髪で、金色のピアスが片耳に光る。
 背は百九十近い。
 がっしりした体にスーツが良く似合い、酒も底を知らない。
 一度彼を見た客は絶えず彼に貢ぎ続ける。
 下のホストに客の数は負けることもあるが、稼ぎは絶対に譲らない。
 一人からの金額が桁違いなのだ。
 歳は雛谷と同じ。
 若くして店を開くことを相談したとき、真っ先に支援したのは紫苑だった。
 恩義も感じている雛谷は、友人という以上に彼を応援していた。
 店に来る度、頂点にある写真を見るだけで安心するのだ。
「大変だね。雛谷さんに目を付けられるなんて、もう逃げられないな」
 細身で、まだ二十歳の恵介は入ったばかりだ。
 たった二年で紫苑の後ろに辿り着いた。
 客は広く浅く。
 髪型やスーツも日替わりで、いつも印象を変える。
 後輩ホストに慕われ、気軽く彼らを世話したりもする。
 そんな恵介を紫苑は余り良く見てはいない。
 だが、この対立関係が丁度良い雰囲気だと思う雛谷は楽しみながら放棄している。
「どこの奴だ」
「んー? 紫苑は嫌がるかな」
「……シエラか」
「あたり」
 恵介の目が輝く。
「シエラって類沢雅の店だよね? うわー、気になるなあ」
「紫野。まだ諦めてないのか」
 紫苑が睨みつける。
「まぁね。一度フられたくらいじゃ負けないよ。やっと地位も上がってきたんだし」
 どこ吹く風という様子に、雛谷も呆れる。
「恵介は類沢さんに勝ちたいんだっけ?」
「そうだよ。雛谷さんは知ってるんだろ? シエラに入れればこんな店未練ないし」
 まずいな。
 雛谷は紫苑の握り締められた拳を見て眉をしかめた。
 いや、面白いか?
 パンパンと手を叩く。
「はいはい。もうじき順位が更新されるよ。スカウトはそこからだからね。安心して稼いじゃって、お二人さん?」
「わかってる」
「当たり前」
 三人は揃って店を出ると、月末には必ず行くバーに向かい歩き始めた。
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