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藤の舞
第10章 休診日
獲物が身支度を終えて問診ブースにくるのを待つ。

診察ベッドのカーテンに、そうメッセージを残しておいた。

服を着て患者に戻った獲物がやってきて、ブースの椅子に腰掛けた。

「毎日治療に来たので、感染症は治りましたよ。
良かったですね。
ご主人との性交も控える必要もありません。

妊娠できるといいですね。」

初日に粘膜細胞を取って出していた検査結果の資料を渡す。

獲物は資料を受け取って眺めていた。

「では、また何かありましたら、いつでもご相談ください。」

淡々と医者としての説明を終えた。

獲物は下唇を噛み、肩を上下させて、何か言いたそうにしていた。

僕は資料やテーブルの片付けを始め、席を立つ用意をした。

ガタン…

「先生、契約は…契約はどうなったんですか?」

「契約?」

「sexの為に何でもするという契約です。」

獲物は恥ずかしがりながらも、はっきりと言葉にした。

「ああ、あれはプレイのひとつですよ。何かを誓うという覚悟をすることで興奮したでしょう?」

「先生…まだ、ホルモン治療の方は終わってないですよね?」

「十分に指導はしましたよ。ご主人と励んでいただければよろしいかと…」
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