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藤の舞
第12章 飢えと渇き
ドアを開けると、オペ後用の簡易シャワー室と更衣室になっていて、
その先の診察室の入口に、白衣とゴム手袋が用意されていた。

それを身に付けてドアを開ける。

「失礼します」

声を掛けて入室したが、部屋の中は真っ暗だった。



患者どころか何も見えない闇。

益々怪しいと思ったが、まさか、あの病院に来ているとは、思いもしなかったのだ。

「診察に参りました。」

声を掛けても闇から返事はしない。

しばらく闇に慣れるまで、じっとしていた。

恐怖に慣れると、

………ッグ…ッグ…

人の声と思われる音と小さなモーター音が聞こえる。

音のする方を見ても、闇は闇のままだった。

「大丈夫ですか?
診察に参りました。」

先程より大きな声で呼びかけるが返事はない。

何か灯りはないか、

ポケットを探ると、小さなペンライトが入っていたので着ける。

それは本当にささやかな光で、足元を照らすにも物足りなかった。

とりあえず、声らしきもののするほうへ向かう。

どうやら、その人は、床に直接寝そべっているようだった。
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