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藤の舞
第15章 誘惑
男が不安そうにしているが、普段の警戒心の鎧は酒のせいで剥がれていた。

たぶんイケる。これで失敗したら、もうチャンスはない。

車内で名刺交換をし、アドレスも交換する。もちろん私の名刺は偽物だ。


目的地で車を止めて降りる。一帯が妖しい光を放つラブホ街だ。

男が訝しげに私を見ているのを気配で感じるが、言葉にする勇気がないのだろう。

腕を掴んだままその1つに入る。

「ここは…」

「少し休めば痛みはひくと思うの、それとも病院に行って大事(おおごと)にして欲しい?」

「いや…」

迷っている男の手を引いて部屋を選び、エレベーターに押し込んだ。

はぁ…

ベッドにバフンと腰掛ける。
男の困った表情が面白い。

「あ〜ぁ、庇ったせいで反対の足にマメが出来そうだわ。」

立ち尽くす男の前で足を上げてヒールを脱ぐ。

ミニタイトから覗く脚を良く見えるようにして…

男が目のやり場に困って視線を反らす。

ああ、捕まえた。簡単に堕とせそうだ。

「こっちは貴方が脱がせて、痛くて曲げられないわ。」

男が観念して床に跪き、アタシのふくらはぎを手で支えヒールを脱がしてくれた。

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