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泡のように
第17章 16.

「・・・・あーもう、頭が痛い。吐きそうだわ。それこそあんたの頭にブチまけてやりたいくらい。もう今日は帰って。ほら、シッシッ!」
手のひらで顔面を押さえ、もう片方の手で私を追い払おうとする。
手のひらの隙間から見えた頬に涙が伝い落ちていた。
黙って立ち上がり、パイプ椅子を元の場所に戻した。
「ごめん。お母さんが大変な時にこんな話をして。また来るね」
だるそうにベットに転がった丸い身体に声をかけると、丸い身体についた丸い顔は無言で頷いた。
「じゃあ」
ベッドを仕切るカーテンに手を掛けたとき。
「健児さんが車に撥ねられて死にかけてる時ね。健児さんは意識朦朧としながら、ずっとあんたの名前を呼んでた。お母さんの名前も篤志の名前も一度も呼ばなかったのにね。死ぬ間際まで、あんたの名前をずっと呼んでたわ。それだけは、これからあんたがどう生きるにしたって、絶対に忘れないで。健児さんの、この世にたった一人しかいない、実の娘として」
振り返ったとき、丸い身体は白い掛け布団の中に隠れてしまっていて、ベッドの上には大きな山が出来ているだけだった。
手のひらで顔面を押さえ、もう片方の手で私を追い払おうとする。
手のひらの隙間から見えた頬に涙が伝い落ちていた。
黙って立ち上がり、パイプ椅子を元の場所に戻した。
「ごめん。お母さんが大変な時にこんな話をして。また来るね」
だるそうにベットに転がった丸い身体に声をかけると、丸い身体についた丸い顔は無言で頷いた。
「じゃあ」
ベッドを仕切るカーテンに手を掛けたとき。
「健児さんが車に撥ねられて死にかけてる時ね。健児さんは意識朦朧としながら、ずっとあんたの名前を呼んでた。お母さんの名前も篤志の名前も一度も呼ばなかったのにね。死ぬ間際まで、あんたの名前をずっと呼んでたわ。それだけは、これからあんたがどう生きるにしたって、絶対に忘れないで。健児さんの、この世にたった一人しかいない、実の娘として」
振り返ったとき、丸い身体は白い掛け布団の中に隠れてしまっていて、ベッドの上には大きな山が出来ているだけだった。

