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泡のように
第22章 21.
「わたしね、篤志に会ったあとしばらくして、3人目を妊娠したの。役所で母子手帳をもらってきた帰りの夜だったかな。わたしね、夢を見たの。今でもハッキリ覚えてるわ。小さい女の子がね、ふわふわした月夜の空にね、浮かんでるの。それでわたしにね、言うのよ。“ママのところに生まれたかったけど、あの子はいないんだね”って。わたしがなんのこと?って尋ねても、その子はね、答えないの。答えない代わりに“でもあの子に絶対会いたいの。あの子はどこにいるの?”って、逆に聞き返してきたのよ。だからわたし、あなたの言うあの子ってのが篤志のことなら、篤志は八田先生のおうちにいるよって答えたわ。そしたらその女の子は消えてしまって、朝目覚めたら、下着が血だらけになってた。すぐに病院に行ったら、初期流産だって。流産なんて初めてのことだったからあんまりにも悲しくて、しばらくは塞ぎ込んだわ。傷が癒えてからも、こんなに悲しい思いは2度としたくないと思って、それ以来子供はつくらなかった」
 
 レイナの手はしっとりと柔らかくて、爪にはやはり、20代のOLがするような煌びやかなジェルネイルが施されていた。
 お母さんの手のような、ささくれとか、ひび割れとか、二枚爪とか、そういう家庭的ながさつきが、それこそ、家の中にほこりひとつ見当たらないように、レイナの手にはそれらが何一つまったく見当たらなかった。

「それから何年かして、八田先生が不慮の事故でお亡くなりになったって、同級生から聞いたの。わたしびっくりして、すぐに電話をかけたわ。篤志を取り戻せるんじゃないかって期待もあったのかも知れない。でも鈴木先生は気丈と振舞って、篤志は私が育てますからって聞かなかった。その時ね、電話のうしろで赤ちゃんの泣き声がしたのよ。だから鈴木先生に、もしかして赤ちゃんがいるんですか?って聞いたら、そうです春に女の子が生まれましたって。でもあんたには関係ないでしょって」

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